ろ》にまだほかの沢地《たくち》があるがね、そこにやまだ嫁《かたず》かない雁《がん》の娘《むすめ》がいるから、君《きみ》もお嫁《よめ》さんを貰《もら》うといいや。君《きみ》は見《み》っともないけど、運《うん》はいいかもしれないよ。」
そんなお喋《しゃべ》りをしていますと、突然《とつぜん》空中《くうちゅう》でポンポンと音《おと》がして、二|羽《わ》の雁《がん》は傷《きず》ついて水草《みずくさ》の間《あいだ》に落《お》ちて死《し》に、あたりの水《みず》は血《ち》で赤《あか》く染《そま》りました。
ポンポン、その音《おと》は[#「その音は」は底本では「その者は」]遠《とお》くで涯《はて》しなくこだまして、たくさんの雁《がん》の群《むれ》は一《いっ》せいに蒲《がま》の中《なか》から飛《と》び立《た》ちました。音《おと》はなおも四方八方《しほうはっぽう》から絶《た》え間《ま》なしに響《ひび》いて来《き》ます。狩人《かりうど》がこの沢地《たくち》をとり囲《かこ》んだのです。中《なか》には木《き》の枝《えだ》に腰《こし》かけて、上《うえ》から水草《みずくさ》を覗《のぞ》くのもありました。猟銃《りょ
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