りゃ、まあ君《きみ》の顔《かお》つきくらいどんなだって、こっちは構《かま》わないよ。」
と、つけ足《た》しました。
 可哀《かわい》そうに! この子家鴨《こあひる》がどうしてお嫁《よめ》さんを貰《もら》う事《こと》など考《かんが》えていたでしょう。彼《かれ》はただ、蒲《がま》の中《なか》に寝《ね》て、沢地《たくち》の水《みず》を飲《の》むのを許《ゆる》されればたくさんだったのです。こうして二日《ふつか》ばかりこの沢地《たくち》で暮《くら》していますと、そこに二|羽《わ》の雁《がん》がやって来《き》ました。それはまだ卵《たまご》から出《で》て幾《いく》らも日《ひ》の経《た》たない子雁《こがん》で、大《たい》そうこましゃくれ者《もの》でしたが、その一方《いっぽう》が子家鴨《こあひる》に向《むか》って言《い》うのに、
「君《きみ》、ちょっと聴《き》き給《たま》え。君《きみ》はずいぶん見《み》っともないね。だから僕達《ぼくたち》は君《きみ》が気《き》に入《い》っちまったよ。君《きみ》も僕達《ぼくたち》と一緒《いっしょ》に渡《わた》り鳥《どり》にならないかい。ここからそう遠《とお》くない処《とこ
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