と》び出《だ》して来《き》て、それの頸《くび》のところを噛《か》んだのでした。
「何《なに》をなさるんです。」
と、母親《ははおや》はどなりました。
「これは何《なん》にも悪《わる》い事《こと》をした覚《おぼ》えなんか無《な》いじゃありませんか。」
「そうさ。だけどあんまり図体《ずたい》が大《おお》き過《す》ぎて、見《み》っともない面《つら》してるからよ。」
と、意地悪《いじわる》の家鴨《あひる》が言《い》い返《かえ》すのでした。
「だから追《お》い出《だ》しちまわなきゃ。」
すると傍《そば》から、例《れい》の赤《あか》いきれを脚《あし》につけている年寄家鴨《としよりあひる》が、
「他《ほか》の子供《こども》さんはずいみんみんなきりょう好《よ》しだねえ、あの一|羽《わ》の他《ほか》は、みんなね。お母《かあ》さんがあれだけ、もう少《すこ》しどうにか善《よ》くしたらよさそうなもんだのに。」
と、口《くち》を出《だ》しました。
「それはとても及《およ》びませぬ事《こと》で、奥方様《おくがたさま》。」
と、母親《ははおや》は答《こた》えました。
「あれは全《まった》くのところ、きりょう好《よ
前へ
次へ
全39ページ中11ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
菊池 寛 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング