屋敷の人達や、アアミンガアドやロッティの来る日も、賑《にぎや》かで愉快でしたが、セエラと印度紳士と二人きりで、本を読んだり話し合ったりする時間は、何か二人きりのものだというようで、特別うれしいのでした。二人で過す時間の間には、いろいろ面白いことが起りました。
 ある晩、カリスフォド氏は、書物から眼を上げて、セエラが身じろぎもせず、じっと火を見つめているのに、気がつきました。
「セエラ、何のつもり[#「つもり」に傍点]になっているの?」
 セエラは頬をぽっと輝かせました。
「こういうつもり[#「つもり」に傍点]だったの。――こういうことを思い出していたのよ。ある日大変ひもじかった時、私の見た子のことを。」
「でも、たいていの日はひもじかったんじゃアないのかい?」印度の紳士は悲しげな声でいいました。「どの日だったの?」
「あなたは、御存じなかったのね。あの夢が、まことになった日のことよ。」
 セエラはそういってから、パン屋の話をして聞かせました。溝の中から銀貨を一つ拾ったこと、拾ってから自分よりひもじそうな子に会ったことなど、セエラは何の飾りけもなく、出来るだけあっさりと話したつもりでした
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