十八 「つもりはなかった」
委《くわ》しい話をセエラにしてくれたのは、美しい、感じのいいカアマイクルの奥様でした。カアマイクル夫人は招《よ》ばれるとすぐ、街を横切って印度紳士の家に来、セエラをその暖かい腕に抱《いだ》きとって、これまでのいきさつを細かに話してくれたのでした。カリスフォド氏は、この思いがけない出来事に昂奮して、病気のからだに障るほどでした。
「私は誓って、あの子を手放したくない。」
身体に障るといけないから、セエラを別室につれて行こうという話が出た時、カリスフォド氏は力なげに、カアマイクル氏にそういいました。
「この方のお世話は、私がしてあげてよ。」と、ジャネットはいいました。「もうじき、お母様も入らっしゃるでしょう。」
ジャネットは、セエラを書斎から伴れ出すと、こういいました。
「あなたが見付かって、私達はうれしくてたまらないのよ。どんなにうれしがってるか、あなたにはとてもおわかりにならないくらいよ。」
ドナルドは両手をポケットに入れて立っていました。彼は省みて自分を責めているようでした。
「僕がお金を上げた時、ちょっとあなたの名前を訊きさえしたらよかっ
前へ
次へ
全250ページ中227ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
菊池 寛 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング