ありません。
「どのみち、お父様にとって、苦しみは同じことでしたわ。お父様は、その苦しみのためにお亡くなりになったのですもの。」
「お父さんの名は何ていうのだい? え?」と、印度紳士は訊ねました。
「ラルフ・クルウって名ですの。クルウ大尉ともいわれていました。亡くなったのは印度ですの。」
 病人のやつれた顔が痙攣《けいれん》しました。ラム・ダスは急いで主人のそばへ飛び寄りました。
「カアマイクル君、これがあの子だ。この子にちがいない。」
 セエラは、紳士が死ぬのではないかと思ったほどでした。ラム・ダスは主人の口に薬を注ぎました。セエラは、そのそばにふるえながら立っていました。彼女はたまげたようにカアマイクル氏を見上げました。
「私が、何の子だと仰しゃるの?」
「この方は、あなたのお父様のお友達なのですよ。びっくりしちゃアいけません。我々は二年の間、あなたを探し廻っていたのですよ。」
 セエラは手を額にあてました。唇はわなわな顫《ふる》えていました。セエラはまるで夢の中にいるように思わず囁きました。
「それなのに、私はその二年の間、壁のすぐ向う側の、ミンチン女塾にいたのだわ。」

   
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