になろう。それから、それから――焼きたてのパンを売ってる店のそばまで来ると、二十銭銀貨が落ちていたとする。そしたら、私は店へ入って、ふうふういうような甘パンを買って、息もつかずにぺろぺろと食べてしまうわ。」
そう独言をいいながら、足許に気をつけ、ぬかるみの中を歩道へ渡ろうとしますと、そこの溝の中に、何か光っているものがあるのを、セエラは目にとめました。泥にまみれてはいましたが、それは確かに銀貨でした。二十銭ではないが、十銭の銀貨でした。
「まア、ほんとだったわ。」セエラは、思わず呼吸をはずませました。
とまた、嘘のようではありませんか。セエラが眼を上げると、真向いにパン屋の店があるのでした。店では一人、愉快な血色のよい母親らしい様子の女が、竈から今取り出したばかりの甘パンを――大きくふくれた、乾葡萄《ほしぶどう》の入った甘パンの大皿を、窓をさし入れているところでした。
セエラは、この不思議な出来事にどきどきしているところへ、窓に甘パンの出てくるのを見、パン屋の地下室から漂うて来るおいしそうな匂《におい》を嗅いだので、ちょっとくらくら倒れそうな気持になりました。
セエラは、この銀
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