とがあっても、あなたは取らないで下さい。)
女は、こまごまと注意を与えてから、男を出してやった。
男が蓼中の御門へ行って見ると、自分と同じような姿をした者が二十人ばかりいた。それとは別に、首領らしい男が一人離れて立っていたが、色白く小柄《こがら》な男であるがこの男の前に皆|畏《かしこま》っていた。外《ほか》に、手下らしい下人が二、三十人ばかりいた。そこでいろいろ命令を出してから、皆打揃って京の町へ入ってある大きな家を襲《おそ》った。その前にその近所にある目ぼしい援兵《えんぺい》でも出しそうな家に対して、二、三人ずつ人を分けて警戒《けいかい》させた。その男も、その警戒の人数の中に加えられた。残りの人数は、みな目的の家に押し入った。その男が、警戒していた家からも、物音をききつけて、得物《えもの》を持って四、五人走り出ようとしたのを、男はよく戦って射すくめてしまった。
六
その家の品物を盗《ぬす》み了ると、一行は舟岡山へ引き取ってそこで品物を各自に分配してくれたが、その男は女に云われた通り、自分は見習いのためについて来たのだから、物はいらないと云って、辞退した。すると
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