女強盗
菊池寛
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)隆房大納言《たかふさだいなごん》
|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)一枚|呉《く》れた
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一
隆房大納言《たかふさだいなごん》が、検非違使《けびいし》(警視庁と裁判所をかねたもの)の別当(長官)であった時の話である。白川のある家に、強盗《ごうとう》が入った。その家の家人《けにん》に、一人の勇壮《ゆうそう》な若者がいて、身支度をして飛出したが暗くてどちらが味方か敵かわからない。まごまごしているうちに、気がついて見ると、味方はことごとく敗走して、自分一人が強盗の中にいる。しかも、強盗達は、自分を仲間の一人だと思って話しかけたりしている。今更《いまさら》、戦って見たところで、とりこめられてたちまちやられそうである。そこで、覚悟《かくご》をきめて、強盗の仲間のような顔をして、強盗について行き、盗品をわけるところへ行って、強盗の顔を見定め住家もつきとめてやろうと云う気になった。それで、盗品の櫃《ひつ》のなるべく軽いものを一つ背負って、強盗について行った。すると、朱雀門《すざく
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