て門を開いた。すると、侍らしい男が二人と、女房《にょうぼう》らしい女が一人、下女を一人連れている。そして家にはいって来ると、手分けをして、しとみ(雨戸のかわり)をおろしたり、台所へ行って、火をもやしたりして、食事の用意を始め、やがて美しい銀器に食物を盛《も》って、主人の女にもこの男にも喰《く》わせた。一体、この男がはいった時に、門はちゃんと閉めてかんぬきもしておいたのである。主人の女は、外界との連絡がないはずであるのに、主人の食物のみか、この男の食物まで用意して持って来ているのである。合点《がてん》のゆかぬ事ばかりだが、お腹が空いているので、気にならないで、たらふく食べた。女も、男の手前など気にせず、思う存分たべている。食べおわると、女房らしい女が後片づけをして、皆連立って去った。すると、主人の女が、その男に門のかんぬきをさせてから、また二人いっしょに寝た。
四
その不思議な女と一夜をあかして、朝になるとまた門を叩く者がある。女は、男を開けにやった。すると、男女が三、四人やって来たが、昨夜の顔触《かおぶれ》とは全然|違《ちが》っている。そして、家の中へはいるとしとみ
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