もびくともしなくなる。するとまた新しい草を引きぬいて新しい罠をこさえる。子供の群の前後には、赤い腹を白い灰のような土の中に横たえた醜《みにく》い小動物の死骸が、いくつもいくつもころがっている。
「高天神《たかてんじん》の城へはどう行くのじゃ」という鷹揚《おうよう》な声がした。子供は皆あわてたような顔をして、その声の主人公を見た。それは十七ばかりの少年であった。前髪を二つに分けた下から、美しい瞳が光っている。男らしさのうちに女らしさがあり、凜々《りり》しさのうちに狡滑《こうかつ》らしさがあった。肌に素絹《しらぎぬ》の襦袢《じゅばん》を着て単衣《ひとえ》を着ている姿は、国持大名の小姓であることを語っている。見れば、はいている白足袋はほこり[#「ほこり」に傍点]で鼠色になっている。腿立《ももだち》を取ったために見えている右の腓《こむら》に一寸ばかりの傷があって、血が絶えず流れている。
「高天神の城へはどう行くのじゃ、教えてたも」と、ややせき心になって繰り返した。しかし子供は皆ぽかんとしている。この頃の子供は義務教育などで早熟されていないから、誰もはきはきと物がいえない。知らねば知らぬといえば
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