いいのだが、それがなかなかいえない。皆ぽかんとしている。少年は三|度《たび》問《とい》を重ねた。するといちばん年かさの子供がやっと口を開いて、
「天神さんのことけえ」というた。この声をきくと若衆はちょっとでも足を止めて、きいてみたのがばからしくなって、
「たわけ者め!」と子供たちに浴びせながら通り過ぎようとした。
 ところがあいにく一人の子供が、まごまごして少年の行く手を立ちふさいだので足蹴にした。その子はよろよろよろめいて、溝の中へ尻餅《しりもち》をついてワッと泣き出した。そう痛くもなかったようだし、裸だから着物の汚れたわけではないのだから、そんなに大きく泣く必要はないのだが、かなり大きく泣いた。子供たちは憤然とした。この頃の子供はすべての野蛮人に共通しているように、言《げん》に怯《きょ》にして行《こう》に勇《ゆう》なるものであった。いざ喧嘩だとなると身構えが違ってくる。蠍《さそり》のように少年に飛びついた。少年ははっと身をかわして腰の一刀を抜こうとした。この意志はこの場合、非常に適当であったが、実現はせられなかった。一人の子供が猛然として身を躍らし、柄を握った少年の手に思い切り噛み
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