独軍の将校たちがワルシャワの歌妓たちの歓待を受けるのだ。お前は、独軍の将校たちの手のうちにお前の女を今手渡ししようとしているのだ、お前がここを去ったら、もうお前は再び帰ることはない。彼女を、お前はこのまま残して置くつもりなのか。お前はダシコフから完全に防御した獲物を、どうして確保しないのか。お前のものにする方法を知らないのか。それは彼女も、ついでにここで殺してしまうのだ。否、殺すのではない、あの女の卒倒している状態を、ただこのままに続けさせておけばいいのだ。ただ彼女を永久に覚めさせなければいいのだ。お前は、もうすぐ死ぬのではないか。その前に殺した人の数が単数であるか複数であるか、それがいかなる相違をなすのだ。リザベッタを完全にお前のものにしてしまえ! それはリザベッタの卒倒の状態をただいつまでも続けておきさえすればよいのだ。すべてが混乱だ。誰が殺したか、誰が殺されたか、分かるものか。今この街の外郭では、人間が幾万となく殺されかけているのだ。
 お前は、自分の可愛い女を、お前の後に残して置くのか。この女は、お前に許したように、ダシコフにも許していたのだ。誰にでもすぐ自分を許す女は、ワルシ
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