勲章を貰う話
菊池寛

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【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)蘇《よみがえ》ってくる

|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)銘々|蘇《よみがえ》ってきた

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
   (数字は、JIS X 0213の面区点番号、または底本のページと行数)
(例)剣※[#「木+覇」、第4水準2−15−85]《けんは》
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          一

 春が来た。欧州戦争第二年目の春が来た。すべてのものを破壊し、多くの人類を殺傷している戦争も、春が蘇《よみがえ》ってくるのだけは、どうすることもできなかった。
 戦争の荒し壊す力よりも、もっと大きい力が、砲弾に砕《くだ》かれた塹壕《ざんごう》の、ベトンとベトンの割れ目から緑の芳草《ほうそう》となって萌え始めた。砲弾に頂《いただき》を削り去られた樺《かば》の木にも、下枝《しずえ》いっぱいに瑞々《みずみず》しい若芽が、芽ぐんできた。
 冬の間、塹壕の戦士たちの退屈な心を腐らせた陰鬱な空の色が、日に日に快活な薄緑の色に変っていった。
 戦線に近いプルコウにある野戦病院の患者たち
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