、彼の胸に突き刺さった。が、中座することは、彼の利かぬ気が許さなかった。
夜の更けると共に、一座の客は減っていた。幸太郎は鈴木兄弟の不運をすでに知っていたのだろう。客の減るのを計って、座を立つかと思うと、杯を持ちながら忠次郎の前へ来た。半知になっていても、忠次郎の方が家格は遥かに上であった。
「貴殿からも、杯を一つ頂戴いたしたい」
幸太郎は、忠次郎が蒼白《まっさお》な顔をしながらさした杯を快く飲み干しながら、
「御不運のほどは、すでにきき及んだ。御無念のほどお察し申す」
幸太郎の言葉には、真摯な同情が籠っていた。自分でも敵を狙ったものでなければ、持ち得ない同情が含まれた。
忠次郎はそれをきくと、つい愚痴になった。無念の涙がはらはらと落ちた。
「お羨ましい。お羨ましい。なんという御幸運じゃ、それに比ぶれば、拙者兄弟はなんという不運でござろうぞ。敵をおめおめと死なせた上に、あられもない悪評の的になっているのじゃ」
忠次郎は、声こそ出さないが、男泣きに泣いた。
幸太郎は、それを制するようにいった。力強くいった。
「何を仰せらるるのじゃ。一旦、敵を持った者に幸せな者がござろうか。御
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