ら顔を出す。中学の制服を着た色の浅黒い凛々しい少年。異状な有様にすぐ気がつく)
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末次郎 どうしたんです、お父さん。
義助 (きまりわるそうに)ええ。
末次郎 どうしたんです、松葉なんか燻《くす》べて。
義太郎 (苦しそうに咳をしていたが、弟を見ると救い主を得たように)末か、お父や吉がよってたかって俺を松葉で燻《くす》べるんや。
末次郎 (ちょっと顔色を変えて)お父さん! またこんなばかなことをするんですか。私があれほどいうといたじゃござんせんか。
義助 そやけどもな、あらたかな巫女さんに神さんが乗り移ってな。
末次郎 何をばかなことを。兄さんが理屈がいえんかってそななばかなことをして。
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(巫女を尻目にかけながら燃えている松葉を蹴り散らす)
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巫女 お待ちなさい。その火は神様の仰せで点《つ》いとる火ですぞ。
末次郎 (冷笑しながら踏み消してしまう)……。
義助 (やや語気を変えて)末次郎! 私はな、ちっとも学問がないもんやけ
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