屋上の狂人
菊池寛

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【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)巫女《みこ》

|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)皆|憑《つ》いている者が

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)[#ここから4字下げ]
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人物
 狂人  勝島義太郎   二十四歳
 その弟   末次郎   十七歳の中学生
 その父   義助
 その母   およし
 隣の人   藤作
 下男    吉治    二十歳
 巫女《みこ》と称する女 五十歳位

 明治三十年代

 瀬戸内海の讃岐《さぬき》に属する島
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舞台 この小さき島にては、屈指の財産家なる勝島の家の裏庭。家の内部は結《ゆ》いめぐらした竹垣に遮《さえ》ぎられて見えない。高い屋根ばかりが、初夏の濃緑な南国の空を画《かぎ》っている。左手に海が光って見える。この家の長男なる義太郎は、正面に見ゆる屋根の頂上に蹲踞《そんきょ》して海上を凝視している。家の内部から父の声がきこえる。
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