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義助 (姿は見えないで)義《よし》め、また屋根へ上っとるんやな。こなにかんかん照っとるのに、暑気《あつけ》するがなあ。
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(縁側へ出て)吉治《きちじ》! 吉治はおらんのか。
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吉治 (右手から姿を現す)へえなんぞ御用ですか。
義助 義太郎《よしたろう》を降してくれんか。こんなに暑い日に帽子も被らんで、暑気《あつけ》がするがなあ。どこから屋根へ上るんやろ。この間いうた納屋《なや》のところは針金を張ったんやろな。
吉治 そらもう、ちゃんとええようにしてありますんや。
義助 (竹垣の折戸から舞台へ出て来ながら、屋根を見上げて)あなに焼石のような瓦の上に座って、なんともないんやろか。義太郎! 早う降りて来い。そなな暑い所におったら暑気して死んでしまうぞ。
吉治 若旦那! 降りとまあせよ。そなな所におったら身体のどくやがなあ。
義助 義やあ、早う降りて来んかい。何しとんやそなな所で。早う降りんかい、義やあ!
義太郎 (けろりとしたまま)何や。
義助 何やでないわ
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