れがどうも、地の下で話しているようなのです。
 まもなく、草の間にかくれてあった穴から、ぬうーっと人が一人出て来ました。そして、私を見つけると、お前はだれか、どこから来たのか、とたずねました。
 それから、私を穴の中へつれて入りました。穴の中には、仲間らしい人がたくさんいました。そして、自分たちは、この島の王さまの馬がかりで、馬を買いに、この牧場へ来ているのだと言いました。
 私に、おいしい食べ物をくれて、
「お前さんは、ほんとうに運《うん》がいい人だよ。もし、あした来たんだったら、もう私たちは帰ってしまっていたからね。道を教えてあげることは、できやしなかったんだよ。」
と、言いました。
 あくる朝早く、私たちは出立《しゅったつ》しました。そして都《みやこ》につきました。
 王さまは私をよろこんで迎えてくださいました。私が出あったさいなんの話をお聞きになり、
「この者に、不自由をさせないように、気をつけてやれ。」
と、家来《けらい》にお言いつけになりました。
 さて、私は、大へん船がすきでしたから、そこにいる間、毎日のように、はとばに出かけて、ボートから荷物をおろすのを、見てくらしまし
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