アラビヤンナイト
四、船乗シンドバッド
菊池寛

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【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)貧乏《びんぼう》

|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)一|番《ばん》

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)こうり[#「こうり」に傍点]
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 バクダッドの町に、ヒンドバッドという、貧乏《びんぼう》な荷かつぎがいました。荷かつぎというのは、鉄道の赤帽《あかぼう》のように、お金をもらって人の荷物を運ぶ人です。
 ある暑い日のお昼から、ずいぶん重い荷物をかついで歩いていましたが、しずかな通りへさしかかった時、大そうりっぱな家が立っているのが、目に入りました。ヒンドバッドは、その門のそばで、少し休むことにしました。
 その家は、とてもりっぱでした。ヒンドバッドは、まだこんなにりっぱな家を見たことがありませんでした。家のまわりの敷石《しきいし》の上には、香水がまいてありました。
 ヒンドバッドの足は、つかれて、熱《あつ》くなっていたものですから、その敷石は大へん気持がようございました。
 そして、開いてあるまどからも、何ともいえぬいい香《か
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