うとう、おき去りにされてしまったのであります。
それから一晩じゅう、私は水につかっていました。そして、朝になった頃には、もうへとへとにくたびれてしまって、死ぬよりほかには仕方がないと思っていました。
けれども、ちょうどその時、大へん大きな波がやって来ました。そして、私を持ち上げたかと思うと、ある島のがけの下へ打ち上げました。
うれしいことには、そのがけは、よじのぼることができました。この上は、青々と草のはえた原っぱでした。そこで私は、まず何よりも休みました。
すぐに気分がなおりました。けれども、大そうお腹《なか》がへっていたので、何かたべる物はないかとさがしに出かけました。
少し行くと、おいしそうな果物《くだもの》の木がありました。そのそばに、きれいな水がふき出している泉《いずみ》もありました。
私はそこで、まず食事をすまして、また何かほかにないかと思って、島の奥《おく》の方へ歩いて行きました。
すると、ほどなく牧場に来ました。馬が、あちこちにはなしてあって、みんな草をたべていました。
しばらく、ぼんやり立っていますと、人の話し声が聞えてきました。耳をすましていると、そ
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