って来たら、射るのだよ。もし、うまくあたったら、すぐに知らせにおいで。」と言って、帰って行きました。
 一晩じゅう、私は見はっていました。けれども、とうとう来ませんでした。
 しかし、夜があけてから、とてもたくさんの象が、ぞろぞろとやって来ました。
 そこで私は、矢つぎばやに、五六本、射てみました。
 すると、大きな象が一ぴき、ごろりと地の上へたおれました。ほかの象はおどろいて、みんなにげて行きました。
 私は、木からおりて、主人の商人のところへ、知らせに行きました。
 それから、また主人のつれ立って帰って来て、大きな象を地にうずめ、そこにしるしをつけておきました。こうしておいて、あとで、きばを取りに来るのです。
 その後、ずっと私は、この仕事ばかりさせられました。そのうち、またこわい目にあうことになりました。
 ある晩のこと、象が、にげて行くと思いのほか、私ののぼっている木のまわりを、とりかこんで、大きな声でうなりながら、足ぶみをしはじめたのでした。それはまるで、大じしんのようでした。そして、とうとう木の根を、引きちぎってしまいました。
 木は、めりめりと大きな音を立てて、たおれてゆ
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