れが、こう言うのです。
「まあ、しずかにしていらっしゃい。……あなたはいったい、だれですか。どこからいらっしったのですか。私どもはこの国の者です。たんぼへ出て働いていますと、いかだが流れて来て、その上にあなたがねむっていらっしゃるので、お助けしたのです。さあ、どうか、ここまでいらっしゃったわけを話してください。」
「ありがとう、いや、どうもありがとう。お話ししましょう。ですけれども、その前に、何かたべる物をくださいませんか。お腹がへって、声が出そうもないのです。」
 黒んぼたちは、すぐに、食べ物を持って来てくれました。それで、私はやっと力がついて、気分もよくなりましたので、何もかも、くわしく話してやりました。
 すると、みんなは、
「この人を、王さまのお目通りへ、つれて出よう。」と、口をそろえて言いました。
 それから、私に、王さまはセレンジブさまというお名前で、世界じゅうで一番えらくて、一番の金持だと、話して聞かせました。
 私は、よろこんで、ついて行くことにしました。もちろん、宝石などの入れてある、こうりも持って行きました。
 セレンジブ王の御殿は、大へんりっぱなものでした。私は、
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