して、すぐに、まっ暗なほら穴の中へ入りました。どんどんどんどん、私はそのまっ暗な中を流れてゆきました。川幅《かわはば》は、だんだんせまくなって、天じょうも、しだいしだいに低くなってゆきました。そして、頭をごつんごつんと打って、だんだん苦しくなりました。それで私は、いかだの上へぺちゃんこに、腹ばってしまいました。
やがて食べ物も、とうとうみんなたべてしまいました。こんどこそ、いよいよ死ぬのだ、と私はあきらめました。そして、いつのまにか、ねむってしまいました。
何時間も何時間も、そのままでいたらしいのです。何だか、がやがやいう声がするように思って、私はふと、目を開きました。
ああ、その時、どんなによろこんでとび起きたか、お察しください。私の目に、青々とした大空が入ったのです。川はしずかに、広々とした、たんぼの中を流れていました。
へんな声だと思ったのは、黒んぼが大勢《おおぜい》よってたかって、私のいかだを、土手の方へ引っぱっていこうとしていたのでした。
私には、黒んぼの言っていることが、ちっともわかりませんでした。しかし、その中にたった一人、アラビヤの言葉を話せる男がいました。そ
前へ
次へ
全68ページ中56ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
菊池 寛 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング