は悲しげに、
「さあ、皆さん。死ぬ用意をしましょう。今までに、この海岸に打ち上げられて、助かった人はないのです。ごらんの通り、後はとてものぼることのできない山ですし、また、助け船が来ることのできるところでもありませんから。」と、言いました。
しかし、そうは言っても、食べ物をみんなに分けてくれました。ともかくも、生きていられるかぎりは、生きていた方がいいと思ったからでした。
さて、この島で私がおどろいたことは、大へんきれいな川が、山から流れ出ているのですが、それが、海へ流れ入らないで、海岸にそって少し流れてから、また、山すその岩でできている、ほら穴の中へ流れこんでいることでありました。そして、そのほら穴の中をのぞいてみますと、その入口の岩は、宝石がはめこんであるように、たくさんきらきら光っています。川底にもダイヤモンドだの、宝石だのが、ちらばっていました。それから、海岸の、どんなすみっこのようなところにも、難破船から打ち上げられた荷物が、ころがっていました。
さて、私の仲間は、食べ物がなくなるにしたがって、一人々々と死んでゆきました。それを私は、次から次とうずめてやりました。
そ
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