ました。すると、その人たちは、ますますおどろいてしまいました。そして、
「そんなあぶない目にあっても、助かったなんて、まあ、なんてお前さんは、運のいい人なんだろう。だが、その肩にのっかってたというおじいさんはね、海じじいと言って、そいつにつかまったが最後、助かりっこはないんだよ。」
と、言いました。それから、私を船へつれて行きました。
 そのうち、船は大きな港につきました。その港の町の家は、みんな石で作ってありました。
 そこで、今まで大へんしんせつにしてくれた一人の商人が、私に、みんなと一しょに、やしの実を取りに行かないか、とすすめました。そして、
「これをお持ちなさい。」と言って、大きな袋《ふくろ》を渡しました。それから、
「けっして、みんなにはぐれて、かってなところへ行っちゃいけませんよ。みんながするようにするんですよ。」と、言いました。
 さて、それから私たちは、ずいぶん遠い、やしの木の森へ行きました。
 やしの木は、大そう背が高くて、まっすぐで、おまけに幹《みき》がすべすべしていました。私は、これでは、とてものぼれないだろうと思いました。そして、いったいどうして、実をとるのだ
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