みました。すると、急に元気が出てきて、何だかうれしくなりました。そして、思わず歌をうたったり、おどったりしました。
 肩にいたおじいさんは、びっくりしてしまいました。そして、手まねで、自分にも飲ませてくれ、と言いました。私は仕方がないので、ひょうたんを渡しました。
 そのひょうたんは、大へん大きなものでした。それで、お酒もずいぶん入っていたわけです。おじいさんは、それを一しずくも残さないまで、飲んでしまいました。それから、へんな声で、何かしゃべりはじめました。そして、しだいに、足をゆるめてゆきました。
 私は、この時とばかり、うんと力をこめて、おじいさんを、地面の上へほうり出しました。おじいさんは、投げ出されたまんま、起き上ろうともしませんでした。
 私は、やっと重荷《おもに》をおろして、せいせいしました。そして、にこにこしながら、海べの方へ歩いて行きました。
 ちょうど海べには、五六人の水夫が、たるを持って、水をくみに上って来たところでした。私を見て目をまるくしながら、
「お前さん、こんな島へ、何をしに来たんだね。」こうたずねました。
 私は、船がこわれてからの、いちぶしじゅうを話し
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