て、ひなのロックを引き出して、りょうりをしはじめました。私は、そんなことをすると、きっとあとでこわい目にあうにちがいないから、およしなさい、およしなさい、と言ってとめました。しかし商人たちは、かまわずどんどん、いろんなごちそうに作っていました。
すると、それからすぐでした。急に空がまっ暗になって、あのロックの大きな黒いつばさが、私どもの頭の上へおおいかぶさってきました。
私たちは命からがら船へ帰りました。船長は、さっそく船を出しました。親鳥が大へんおこっているということが、わかりましたから。
おそろしい大きな鳥は、すぐに海の上へ追っかけて来ました。空は見る見るまっ暗になってしまいました。見上げると、大きなつばさがぴゅーんぴゅーんと風をきっています。とがった爪の間には、大きな石を、いくつもいくつも持っていました。それは石というよりも、岩と言いたいくらい大きなものです。
船のま上へ来た時、持っていた石を一つ落しました。石はびゅーっとうなりを立てて落ちて来ました。さいわい、それは船にはあたりませんでした。すぐ近くの海がまっ二つにさけて、船のまわりには、海の底《そこ》の砂のまじった波が
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