、まるでかべのように立ち上りました。
やれうれしやと思って、上を見上げると、まあどうしましょう、もう一羽、ロックがやって来ているのです。そして、しっかりとねらいを定めて、今にも石を落そうとしているのです。
ああ、とうとう船はだめでした。みじんにくだかれてしまいました。つぶされて死ななかったものは、海の中へほうり出されて、波のまにまに沈んでゆきました。
しかし、運のいいことには、私は、浮いていた板にとりつくことができました。そして、足をぶらぶらさせているうち、ある島へつきました。
ほんとうに全く、この島にこそは、私はおどろいてしまいました。きっと、世界で一ばん美しい島だろうと思います。
今まで、たべたこともないような、おいしい果物や、それはそれは美しい花が、そこら一面にあって、きれいな小川が、さらさらと流れていました。
私は、これまでのおそろしさも、つかれも忘れてしまって、凉しい木《こ》かげに休みました。
あくる朝、散歩《さんぽ》かたがた、果物を取りに出かけました。そして、何だかあわれに見えるおじいさんが、小川のつつみに、じっとすわっているのに会いました。その人は、大そう年
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