れい》いたしました。どうぞ、お気におかけくださいませんように。」と、言いました。
シンドバッドは、
「いや、なんで私が、お前さんをとがめたりするもんですかね。私は、お前さんを、ほんとうに気の毒《どく》だと思っていますよ。けれどもお前さん、私が、しじゅうのんきにくらしているのだと、思っちゃあこまります。それからまた、らくらくとこの財産《ざいさん》をつくり上げたと思っても、いけませんよ。これまでになるには、何年も何年も、全く命がけでかせいだからなんです。」と、言いました。
それから、ほかのお客さまの方へ向きなおって、
「そうです、皆さん、私が今までに出あった数々のぼうけんは、どなたにだっておできになることではありません。私がきょうまでにした七へんの航海《こうかい》の話は、まだ一度もお耳に入れたことがありませんでしたが、もしも皆さんが聞きたいとお望みになるのなら、今晩からはじめてもいいと思います。」
と、言いました。
それから召使に、荷かつぎの荷物を、家までとどけてやるように、と言いつけました。
ヒンドバッドは残って、一番はじめの航海の話を聞くことになりました。
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