さまが、テーブルをかこんで腰《こし》かけていました。テーブルの上には、おいしそうなごちそうが、いっぱいならべてあります。一ばん上座《じょうざ》に、まっ白いひげをはやしたりっぱなおじいさんが、どっしりと腰かけていました。この人がシンドバッドだったのです。
 シンドバッドは、びっくりしているヒンドバッドの方を向いて、にこにこしながら、自分のとなりへ来て腰をかけるようにと、手まねきをしました。
 そして、ヒンドバッドが腰をかけると、テーブルの上のごちそうを、とってやるようにと、召使に言いつけました。
 召使は、ヒンドバッドの前の皿《さら》に、ごちそうをたくさんもり上げ、コップには、上等のお酒をなみなみとつぎました。
 ヒンドバッドは、これは、ゆめではないかと、思いはじめました。
 ごちそうをたべ終ってから、シンドバッドはヒンドバッドの方を向いて、さっき、まどの外で、何を言っていたのか、と聞きました。
 ヒンドバッドは、大そうはずかしくなって、思わずうなだれてしまいました。そして、
「だんなさま、ごめんください。あの時は、大へんくたびれていたものですから、つい、ばかげたことを言って、失礼《しつ
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