そぎで、森の中へ走って行きました。そしてそこで、七日ほどすごしました。
 しかし、やがてまた走り出て、とうとう島のはんたいのかわへ行きつきました。
 そこには、西洋人たちが、こしょうを取りに来ていました。そして私を見て、大へんびっくりしました。それから私の話を聞いて、なおなお、おどろいてしまいました。
「あのやばん人どもは、だれだって見つかりしだい、殺してたべてしまうのです。無事《ぶじ》ににげ出して来たのは、きっとあなた一人でしょう。」と、言いました。
 それから私を、自分たちの船に乗せて、その国へつれて行きました。そして、王さまのお目通りへ、つれて出ました。
 それから、みんなは、なかなかしんせつにしてくれました。
 王さまも、とくべつにお取立てくださって、高い位《くらい》につけてくださいました。
 さて、その島は、大へんお金のたくさんある島でした。そして、都《みやこ》では、さかんに商売が行われていました。私も、すぐに仕合せになって、満足していました。
 しかし、この島で、おどろいたことには、だれもかれも、馬によく乗るのですけれど、くらやあぶみや、たづなを使う者がないのです。それで、
前へ 次へ
全68ページ中37ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
菊池 寛 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング