した。けれども私は、もともと用心ぶかいたちですから、たべるふうだけしておきました。なぜかと言いますと、どうもこのやばん人どもは、人間の肉をたべているらしく思われたからです。
でも、ほんとうに、たべないでよかったのです。私の仲間は、食べ物をのみこむと、まもなく気をうしなってしまいました。そして、やがて気がついた時は、もうすっかり気ちがいになっていました。
これはどう見ても、やばん人どもが、何かたくらんでいるのにちがいないと思いました。
その次にまた、ごはんの上にやし[#「やし」に傍点]の油をどっさりかけて、持って来ました。この時は、
「はーあ、こうして、みんなを太らせておいてから、たべるんだな。」と、わかりました。
それとともに、私は大そうこわくなりました。それからは、いよいよ何にもたべませんでした。それで、大へんやせてしまいました。だれだって、殺してたべようとは思わないほどに、なってしまいました。
さて、ある日、年とったやばん人が、ただ一人、番をしているきりで、みんな出て行ってしまったことがありました。それで、私はやすやすとぬけ出すことができました。
私は、できるかぎり大い
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