もは、それぞれお金もうけをしました。
ところがある日、大あらしがやって来たのです。そして、船長でさえも、船をどうすることもできなくなってしまいました。
帆《ほ》は風のためにぼろぼろにちぎられて、まるでリボンのようになってしまいました。波は、何べんも何べんも、かんぱんの上をあらって、そのうちに船は、とうとう沈みはじめました。
乗組員と、お客さまの大部分は、おぼれてしまいました。しかし、私ども二三人は、やっと板きれに、とりつくことができたのです。そして、一晩じゅう、おそろしい思いをしながら、波にただよっているうちに、ある島へ流れつきました。
「生きているより、死んだ方がましだった。」
そう思いながら、夜があけるまで、海岸にたおれていました。
やがて、朝になってから、何かたべるものがほしくなったので、島の奥《おく》の方へ歩いて行きました。大して歩きもしないうちに、まっ黒な、やばん人《じん》のむれに行きあいました。
このやばん人どもは、すぐに私たちをとりまいて、自分らの小屋の方へ、引っぱって行きました。そして、まずはじめに、食べ物をくれました。私の仲間は、それをがつがついってたべま
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