さいませんでしょうか。もちろん、分《わ》け前《まえ》はさし上げるつもりなんですが。」とのことなのです。
そこで、私は、
「それは、けっこうなお考えです。だが、その商人の名前は、何というのでしたか。」
と、聞いてみました。すると、船長は、
「シンドバッドというのです。」と、答えたではありませんか。
私は、こうり[#「こうり」に傍点]についている、私の名前をしらべてみました。それから、船長に、
「その人は、ほんとうに死んだのですか。」と、聞きました。
船長は、
「それが気の毒なんです。とてもあの島では、助かっている見こみはありません。」
と、答えました。そこで、私は船長の手をとって、
「船長、私の顔をよーっくごらんください。あなたはこの顔に、おぼえはありませんか。私こそそのシンドバッドです。あのロックの島にとり残された、シンドバッドです。」
と、言いました。そして船長に、いろいろこわい目にあった話をして聞かせました。そのうちにだんだん、私がシンドバッドだということが、わかってきました。そして、大よろこびで品物をみんなと、今までにほかの島で私の品物を売ってもうけたお金とを、私に渡して
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