した。私を助けに来るのです。
まもなく、私はその船に乗ることができました。そして、いっさいの話をしました。だれもかれも、私をかわいそうに思って、大そうしんせつにしてくれました。そして、新しい着物を出してきて、
「そのぼろぼろになった着物と、お着かえなさい。」と、言ってくれる人もありました。そのほか、いろんなことをして、私をなぐさめてくれました。
そんなにして、航海をつづけているうちに、びゃくだんの木が、いっぱいはえている島へつきました。そこで、いかりをおろして、商人たちは島の人たちと取引をするために、陸《おか》へ上ってゆきました。
そのあとで、船長が私を呼んで言うには、
「じつは、少しお願いしたいことがあるのですが、聞いてくださいませんでしょうか。ほかでもありません。まあ、このたくさんの荷物を見てください。これはみんな、この船に乗っていたバクダッドの商人のものなのですが、気の毒なことには、その人を、ある島へ、おき去りにしてしまったのです。それで私は、この荷物をみんな売りはらって、そのお金を、その商人の家の人にあげたいと思っているのですが、あなた、これを陸へ持って上って、売ってくだ
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