出てしまいました。すると、仲間の一人が、
「私たちは、もう神さまに見はなされてしまったのです。あんなにして、一人々々殺されてゆくよりも、いっそ、みんな一しょに死んでしまおうじゃありませんか。」
と、言いました。
「なるほど、それももっともです。しかしまあ皆さん、私の考えも、ひとつお聞きください。」
と、私はそれに答えてから、口をきりました。それから、
「このあたりに流れついている流木《りゅうぼく》を拾って、いかだを作りましょう。そして、もしもあの大入道を殺すことができなかったら、それに乗って、にげたらよいじゃありませんか。いかがです。」
と、相談してみました。
すると、みんなこの話に、さんせいしてくれました。そして、夕方までにいかだを作り上げて、海岸につないでおきました。
さて、それから、帰りたくもない御殿へ、いやいやながら帰って行きました。きっと今晩も、だれかが殺されて、たべられてしまうにきまっていましたが。
大入道は、また一人を、いつものように夕ごはんにしてたべると、大いびきで寝てしまいました。そこで私どもは、しずかに、大きなかなぐしを二つ、取り上げました。そして、かっかっと
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