石炭がもえている中へ、つっこみました。そして、それがまっ赤になるのを待って、こっそりと大入道の寝ているそばへ、近よって行きました。それから、みんなで力をあわせて、そのかなぐしを、大入道の目の中へつきさしました。
 大入道は、おそろしいうなり声を立てて、痛《いた》いのと、腹が立つのとで、とび起きました。そして、うでをのばして、私どもをつかまえようとしました。けれども、もうめくらになっているものですから、私どもはうまくにげまわって、すみの方にうつぶしになっていました。それで、とうとう一人も、つかまえられませんでした。
 大入道は、わあわあ泣きながら、やっと、こくたんの戸のところまで行きました。そして、手さぐりで戸をあけて、まっ暗なやみの中へ消えていってしまいました。その泣き声が、いつまでもいつまでも、夜の空にごーごーと鳴りひびいていました。
 私どもはすぐに、いかだをつないであった海岸をさして、走って行きました。そして、そこで、大入道が死んでしまったのか、まだ生きているのかわかるまで、待つことにしました。
 けれども、やっぱり、私たちは運が悪かったのです。夜があけてゆくにしたがって、雷のよ
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