やりと笑って、船長をかなぐしに、ぷすりとさしこみました。そして焼きはじめました。
 それから船長を、夕ごはんにしてたべてしまうと、ぐうぐうねむりはじめました。そのいびき[#「いびき」に傍点]は、一晩じゅう、雷がごろごろ鳴りひびいているようでした。
 そして朝になると、私たちには目もくれないで、さっさと出かけて行きました。
 すぐに、私どもは、よりあつまって、自分たちの不運《ふうん》を悲しみあいました。そして、どこかほかに、かくれ場をさがそうと思って、御殿を出て行きました。
 しかし、島じゅうどこにも、そんなところはありませんでした。
 夜になって、仕方なく、また御殿へ帰って来ました。
 すると、まもなく大入道も、外から帰って来て、また仲間の一人をつかまえて、きのうの船長と同じようにして、たべてしまいました。
 次の朝、大入道が出かけて行った後、私どももやっぱり、出かけました。こんどは、もう一度この御殿へ、たべられに帰って来るくらいなら、いっそ海へ身を投げて、死ぬ決心《けっしん》でした。
 それから、方々さがしても、やっぱりどこにも、かくれ場はありませんでした。そして、出るともなく海岸へ
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