、そんなりっぱなダイヤモンドを見たのは、はじめてのようでした。
「さあ、がっかりなさったかわりに、どれか一つお取りください。」
と、どなりつけた商人に言いました。
 すると、その人は
「では、この小さいのを一ついただきましょう。」と、言って、きらきら光っている中から、一ばん小さいのを一つ取り出しました。
 私は、もっと大きいのをお取りなさい、とすすめましたが、その人は首《くび》をふって、
「これ一つあったら、私がほしいと思った財産をつくることができます。私はもう、こんなあぶない思いをして、ダイヤモンドをさがしには来ますまい。」と、言いました。
 それから、みんなで、港をさして出かけました。そして、そこから船に乗って、家へ帰ることにしました。帰りみちでも、いろいろあぶない目にあいました。けれども、ともかく、バクダッドへ帰って来ることができました。
 私はダイヤモンドを売って、大へんなお金をもうけました。そして、たくさんのお金を貧乏人にほどこしました。そして前よりも、もっとお金持になって、人からちやほやされるようになりました。

 ここで、シンドバッドは話をやめました。そして、また百円、ヒ
前へ 次へ
全68ページ中21ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
菊池 寛 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング