て来て、大きな声でわしを追いたてました。わしは、びっくりして、そのままとび去ってしまいました。
 この人は、この巣の番をしている商人で、肉の中のダイヤモンドをさがしに来たのでありましたが、私を見て、びっくりして、後へとびのきました。けれども、すぐに、
「お前さんはここで何をしているんだ。ああわかった。ダイヤモンドをぬすみに来たんだな。」
と、おこりつけました。
 しかし、私は、落ちついて、
「まあ、お待ちください。私はけっして、どろぼうではありません。私の話をお聞きになったら、きっと私を、気の毒に思ってくださるでしょう。そして、きっとおとがめにはならないでしょう。それから、お望《のぞ》みのダイヤモンドなら、ここに少し持って来ましたから。」と、言いました。
 そこへ、ほかの番をしている商人たちもやって来ました。私はみんなに、今までの、あぶない目にあった話をして聞かせました。商人たちは、私の勇気と、そんなあぶない目からうまくのがれたちえとに、びっくりして、ただただ目を見はっているばかりでした。
 それから私は、手にいっぱいダイヤモンドをつかみ出しました。そして、みんなに見せました。みんなは
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