した。
 それから私は、少しばかりの土地を買って、小ざっぱりした家を立てました。そして、安楽《あんらく》にくらして、こわい目にあったことは、みんな忘れてしまおうとしました。

 ここで、シンドバッドは、一番はじめの航海の話を終りました。そして、音楽をはじめるように、また、もっとごちそうを持って来るように、と言いつけました。
 さて、それがすんだ時、シンドバッドは、金貨で百円ほどを、ヒンドバッドにくれました。そして、もしも二度めの航海の話が聞きたかったら、あすの晩の、今時分にまたおいで、と言いました。
 ヒンドバッドは、大いそぎで、自分の家へ帰って行きました。
 皆さん、その夜、まあどんなにヒンドバッドのおかみさんや、子供たちがよろこんだか、お察《さっ》しください。
 さて次の晩、ヒンドバッドは、一番いい着物を着て、シンドバッドの家へ行きました。
 ゆうべと同じように、大そうなごちそうが出ました。そして、それがすんだ時、
「皆さん。今晩は、二度めの航海の話をしようと思います。これは、ゆうべの話よりか、もっともっとふしぎなことがたくさんあります。」と、シンドバッドが申しました。

    
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