二|度《ど》めの航海《こうかい》の話《はなし》

 家へ帰って、しばらくの間は、私も楽しくくらしていました。しかし、まもなく、私は、ぶらぶらとその日その日をおくることが、いやになりました。そして、海の上へ乗り出して、波の上をとぶように走ったり、帆づなをびゅうびゅううならせて吹いてゆく、風の音を聞いたりしたくて、たまらなくなりました。
 そこで私は、いそいでいろいろの品物を買いあつめ、もう一度、外国へ商売《しょうばい》に出かけることにしました。
 それから、つごうのよさそうな船に乗って、大勢の商人たちと一しょに、いよいよ二度めの航海に出かけました。
 船は、みちみち、いろんな港につきました。私どもは、そのたんびに、持って来た品物を売って、大そうもうけました。そして、すっかり品物を売りはらってしまってから後のことでした。ある日のこと、私たちは、ある島につきました。
 その島は、ほんとうに美しい島でした。エデンの園《その》かと思われるほど、きれいなところでした。たくさんの花が、にじ[#「にじ」に傍点]のように咲きみだれて、じゅくした果物が、おいしそうにふさ[#「ふさ」に傍点]になって、
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