すから、大してくたびれもしませんでした。そんなにして、とうとう二人は山と山との間の深い谷まで来てしまいました。そこでやっと、まほう使が足をとめました。
「ああ、とうとうやって来たな。まず、たき火をしようじゃあないか。かれ枝を少し拾《ひろ》って来ておくれ。」と、アラジンに言いました。
 アラジンはさっそく、かれ枝を拾いに行きました。そして、すぐ両手にいっぱいかかえて、帰って来ました。まほう使は、それに火をつけました。かれ枝は、どんどんもえはじめました。おじいさんはふしぎな粉《こな》を、ポケットから出しました。それから、口の中で何かぶつぶつ言いながら、火の上にふりかけました。すると、たちまち大地がゆれはじめました。そして、目の前の地面がぱっとわれて、大きな、まっ四角な平たい石があらわれてきました。その石の上には、輪《わ》がはまっていました。
 アラジンはこわがって、家へ走って帰ろうとしました。けれども、まほう使はそうはさせませんでした。アラジンのえりがみをつかんで、引きもどしました。
「伯父さん、どうしてこんなひどいことをするんです。」アラジンは泣きじゃくりながら見上げました。
「だまって
前へ 次へ
全38ページ中6ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
菊池 寛 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング