をいってみて、一体何かになるんでしょうか。誰が選んでくれたのでもない、御自分でお選びになった道じゃありませんか。それにあなたは何と思ってらっしゃるか知りませんがね。精三さんはあなたには過ぎた旦那様ですよ。(出て行く)
伸太郎 (立上って寝椅子の方へ行きながら)誰が選んだのでもない、みんな自分で選んだ道か。精三君はお前には過ぎた亭主だ。そりゃほんとのことだぜ。(ごろりと横になる)
ふみ いやだわ。これじゃあまるで、私が叱られに来たみたいだわ、そうかしら、精三が私には過ぎた旦那さまだなんて……私、そんなこと考えてみたこともないわ。でもそういわれてみるとあんなにそわそわして、落ちつきのなかったお人好しが、今じゃすっかり自信たっぷりなんですもの。わけがわからないわ。いつからあんなになったんだろう。(急に)帰りましょう、旦那様のところへ。(そそくさと出てゆく)
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間、けい入って来て寝椅子の傍へ行く。
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けい あなた。
伸太郎 ……。
けい あなた、おやすみになったんですか。
伸太
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