ゃ、お姉さんがいて下さった方がよかったには違いないけれど……。
けい 私も夕方までには帰れるつもりでいたのだけれど話が混入《こみい》ってくればそう予定通りにはゆかないものだから。支那の政府が変ったばかりでこれから何方《どっち》を向くかわからないことだし、直接商売に関係のあることですものねえ……。
伸太郎 早く帰ったからどう遅く帰ったからどうってことはないさ。とにかく、いい年をした人間が三人も首を揃えているんだからね家には。
精三 そりゃそうですよ。こういうことは何もそうむずかしく考えることはないんです。いくら大騒ぎしたって纏《まとま》らない時は纏らないし、纏るものなら放っておいたって纏ります。それだから縁というんです。
ふみ あなたのように無造作に考えるのもどうなんですかね。いくら好きな道だからって、今日みたいな日に将棋を指《さ》すなんて。
精三 いや、俺は別に指したくっていい出したわけじゃない。お愛想のつもりでいったら向うが乗ってきたんだ。
ふみ 時と場合を考えて御覧なさい。御見合いの介添に来て、介添すべき相手を放ったらかしといて自分が遊びごとに熱中してしまうなんて……総子姉さんにし
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