からいいじゃありませんか。
伸太郎 (半ば当てつけに)自分がそんな身分になった時の事を考えてみればいいんだ。(立って縁側の方へ行って向うむきに坐る)
けい (少しむっとして)大変御寛大なことでございますね。でも、困る時はやっぱり私が困るんですから。
伸太郎 おい。それは俺に働きがないという謎かね。
総子 どうせ私はこの家の厄介者なんです。子供が二人あろうと、年をとっていようと、そんなことなんか、どうだってかまいません。おけいさんがあの人がいいっていうならあの人の所へ行きます。ええ、行きますとも!(そういって泣きながら駈けこむ)
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間。
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精三 どうも……なんだな。女も三十を越して一人でいるというのは、精神的に具合が悪いようだな。
ふみ そりゃ、女だって生きてるんですもの、虫の居所の悪い時だってありますわ。
精三 しかし、今の話と総子さんの縁談と一体何の関係があるのかね。俺にはわからんね。女のああいう神経は。
けい 私がもっと早く帰ってくればよかったのですよ。
ふみ そり
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