男のいい所がお前なんぞにわかってたまるものか。
ふみ えええ。どうせそうでしょうよ。男のいい所がわかるくらいならあんたなんかと一緒にならなかったでしょうからね。
精三 なに!
章介 おいおい。そういう話は二人だけの時に願おうじゃないか。
精三 いや。あっははは、こりゃ、一本参りました。はっははは。
伸太郎 (むっつり)いやに遅いじゃないか。今迄クラブにいたのかね。
けい すみません。……みんな血眼《ちまなこ》になってるもんだから話がすっかりのびちまって。
伸太郎 遅くなるならなるでそういって貰わなくちゃ。家でも帰るか帰るかと思って待ってるんだ。
けい だって……家の方の段取りはちゃんとついてるんだし、精三さんだって頼んであるんですもの。
伸太郎 精三君だって勤めのある人だ。そうそう此方《こっち》の勝手な時に呼び出されては、困るだろう。知栄だってお前がいないもんだから何時迄《いつまで》もねやしないし。
けい あら、子供は何時だって咲やと一緒にねるんだから、そいって下さればいいのに。知栄ちゃん咲やにそういってお床とって貰いなさい。
知栄 私、お母さまと一緒にねるの。
けい (つい焦々《いら
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