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章介 ふっふ。流石《さすが》のお歴々もお前の口にかかっちゃひとたまりもないね。驚いている顔がみえるようだ。
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けいと章介が庭から入って来る。
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けい だってそうじゃありませんか。どうせ乗りかかった船なんですから今更ちっとやそっとの物要《ものい》りを気にしてどうするんです。そんなことばっかりいってるから元も子もなくしてしまうんです。アメリカをごらんなさい。イギリスをごらんなさい。商売上何の値打もない、北京に御殿みたいな銀行をたてて、その支配人が外交官以上の勢力を張って支那の大官たちとゆききしているんですよ。
知栄 お母さまおかえりなさい。
けい ああ只今、私はね支那問題は結局お金だと思うんです。
章介 しかし、そういう支那人自身のその日ぐらしの精神をめざめさせることがまず第一なのだ。今のままで放っておけば、支那はやがて第二のバルカンだ。今ヨーロッパでやってるような戦争をアジヤでも又引起すことになるのだ。
けい それだからいうのですよ。国民党を援《たす》けると
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