いいじゃありませんか。
総子 むきになるわよ。もっということに気をつけてもらいたいわ。
ふみ はいはい。では以後を気をつけることにして……。一体どうなの、お姉さん自身の気持は。
総子 なんだか私にはわからないわ。あの人でもいいような気もするし、もう少し何とかしたのがありそうな気もするわ。結局結婚の相手というものはどうしてもこれでなくちゃというようにして、決るんじゃないってことがだんだんわかってくるような気がするわ。
ふみ 左様でございますか。あああ。いつまでもお若くてお羨《うら》やましいことだ。
知栄 総子おばさん。今日は随分綺れいね。
ふみ ほらほら。子供は正直よ。知栄ちゃんに迄ちゃんとそう見えるんだから。何か奢《おご》って戴かなくちゃ合わないわ。
総子 よして頂戴。私にとっちゃ笑いごとじゃなくってよ。もうもうお見合なんか沢山。その度にどきどきしたり、はらはらしたりするだけでも命が縮まる思いがするんですもの。もういい加減に見合ずれがしてもいいと思うんだけど、やっぱり駄目。自分で自分に腹が立ってくるわ。この間|何《なん》の気なしに写真屋の前通ったら飾り窓に自分のお振袖の大きいのが出てる
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